近年、副業やリモートワークの広がりによってコワーキングスペースの需要は増加しています。
しかし、需要があるからといって何もしなくても利用者が集まるほど甘いビジネスではありません。
実際、集客に苦戦して開業から数年で閉鎖に追い込まれるケースも少なくありません。
競合スペースが次々と登場する中、自分のコワーキングスペースに人を呼び込むためには、計画的で効果的な集客戦略が欠かせない状況です。
そこで今回は、コワーキングスペースでおすすめの集客方法をフェーズ(段階)別に整理して解説していきます。
導入期から成長期までフェーズごとの戦術に加え、地域やターゲットの違いによる戦略調整、ありがちな失敗例とその対策、さらにはチェックリストまで網羅し、競合に負けない集客のコツを詳しく紹介します。
ぜひチェックしてみてください。
コワーキングスペース集客の重要性と基本ポイント
コワーキングスペース運営において、安定した集客は事業成功の生命線です。
どんなに魅力的な設備を揃えても、利用者に存在を知られ選ばれなければ収益にはつながりません。
また、一度利用者を呼び込んでも継続して利用してもらいリピーターになってもらうことが重要であり、単発の集客策だけでは不十分です。
集客力を高めるためには、戦略的なマーケティング施策と日々の地道な取り組みの両方が求められます。
まさに、集客戦略の巧拙がコワーキングスペース成功の鍵を握ると言っても過言ではありません!
集客成功のために押さえておきたい基本のポイントは次のとおりです。
- ターゲットのニーズを深く理解すること。
想定する利用者層が何を求めているかを把握し、それに合った空間やサービスを提供します。
例えば、フリーランス向けなら高速Wi-Fiと集中できる静かな環境、スタートアップ向けなら登記可能な住所や会議室の完備など、ニーズに即した魅力づくりが必要です。 - 競合にはない独自の強みを打ち出すこと。
他のスペースと差別化できる設備やコンセプトを明確にしましょう。
立地の良さ、内装の雰囲気、価格設定、提供イベントなど、「ここだけ」の特徴があると利用者の関心を引きやすくなります。 - 利用者とのコミュニケーションを密に取ること。
日頃から利用者の声に耳を傾け、要望に応える姿勢を示すことで信頼関係を構築します。
満足度が高まった利用者はリピーターとなり、周囲への口コミによる新規顧客獲得にも寄与してくれます。
以上の基本ポイントを前提に、具体的な集客方法を次章以降で紹介していきます。
それでは、フェーズごとに効果的な施策を見ていきましょう。
【フェーズ別】コワーキングスペースの集客方法
コワーキングスペースの集客施策は、スペースの運営段階に応じて押さえておきたいポイントが変わります。
ここでは、「開業前」「開業直後(初期)」「成長期」「安定期」の4つフェーズ別に、それぞれの集客戦略を解説します。
① 開業前(プレオープン)の集客準備
開業前の準備段階では、オープン後にスムーズに利用者を集めるための土台作りが重要です。
例えば、オープン前にクラウドファンディングを実施して資金調達しつつ話題を集めたり、SNSを開設しておき開業告知を行い事前に関心層との接点を作っておくと効果的です。
また、コワーキングスペース情報を扱うポータルサイトへの掲載準備を進めておけば、オープン時にスムーズに情報を届けられます。

他にも、内覧会やプレオープンイベントを開催し、地域の潜在顧客に実際の雰囲気を体験してもらうのも良い施策です。
さらに、地元独自のコミュニティやメディアにプレスリリースを配信するなど「○月○日に新しくオープンします!」というニュースを早めに広め、地域での認知度を高めておきましょう。
開業前に興味を示してくれた見込み客には、メールマガジンやSNSを通じて進捗情報を継続的に発信し、オープン当日にスムーズに案内できるよう準備しておくことも有効です。
- オープン前にクラウドファンディングを実施
→CAMPFIRE(キャンプファイヤー)などで実施 - SNSを開設しておき、開業告知 & 事前に関心層との接点を作っておく
- コワーキングスペース情報を扱うポータルサイトへの掲載
→TASRU(タスル)への掲載 - 内覧会やプレオープンイベントを開催
- 地元独自のコミュニティやメディアにプレスリリースを配信する
② 開業直後(初期)の集客方法
オープン直後のフェーズでは、一気に認知を広げて初期ユーザーを獲得することが最優先です。
まずはGoogleビジネスプロフィールにスペース情報を登録し、Googleマップ検索で上位に表示されるようにしましょう!(いわゆるMEO対策(マップエンジン最適化)です。)
併せて、主要なコワーキングスペース検索ポータルサイトにも正式に情報を掲載し、口コミ投稿が集まりやすい環境を整えます。
オープン記念として一定期間の割引や無料利用デーなどお得なキャンペーンを実施することも重要です。
実際に気軽に使ってもらう機会を作ることで、その後の月額会員契約につながりやすくなります。
また、この時期はリスティング広告(検索連動型のWeb広告)やSNS広告に広告予算を投じ、地域やターゲットに合わせて集中的に宣伝することで一気に認知度を高めます。
駅前や周辺施設でのチラシ配布や、店舗前への看板設置といったオフライン施策も組み合わせ、地元エリアでの認知向上に努めましょう。開業直後に得た利用者からの口コミは次の顧客を呼ぶ原動力になるため、丁寧な接客とフォローも欠かさず行い、ポジティブな評価を積み重ねていくことが大切です。
- Googleビジネスプロフィールにスペース情報を登録(MEO対策)
- コワーキングスペース検索ポータルサイトへの情報追加
- オープン記念として、キャンペーンを実施する
- リスティング広告やSNS広告などで宣伝を行う
- チラシ配布・看板設置などの地元エリアでのオフライン施策
③ 成長期の集客戦略
開業からしばらく経ち軌道に乗り始めた成長期では、獲得した顧客層をさらに増やしておき、継続利用者を増やす施策に注力しましょう。
Web集客の面では、自社ホームページを本格的に運用し、ブログ記事の定期発信などSEO対策を強化して新規流入を増やしましょう。
例えば、リモートワークのコツや起業ノウハウなどターゲットが興味を持ちそうなコンテンツを発信することで、検索エンジン経由での認知拡大が期待できます。
さらに、季節や時期に合わせたプロモーションを展開するのもおすすめです。
春の新年度シーズンには新しい働き方のスタートを応援する入会キャンペーン、夏場は涼しい室内で快適に作業できる点をPRするといったように、タイミングに応じて訴求ポイントを変えることで話題性を持たせることができます。
SNS運用も引き続き重要です。日々の投稿で利用者の声やスペースの雰囲気を伝え、フォロワーとのコミュニティを育成することで来訪意欲を高められます。
また、定期的なネットワーキングイベントやセミナーの開催によって、新たな層の集客と既存利用者の満足度向上を図ります。同じ関心を持つ人々が集まる場を提供することで、「ここに来れば人脈が広がる」という付加価値が生まれ、リピーター獲得につながります。
さらに、外部の団体や企業とのコラボレーションも有効だと言えます。
例えば、地域の起業支援団体と共同で勉強会を開いたり、近隣のカフェと提携して会員限定の割引サービスを提供したりすることで、互いの顧客基盤を共有できます。他にも、近隣の大学や行政の創業支援部署とタイアップし、学生起業家や地元の創業希望者に向けたプログラムを共同開催するケースもあります。
そうした取り組みを通じて新規層の認知獲得につなげることも可能です。
加えて、メールマガジンやLINE公式アカウントを活用してキャンペーン情報やイベント案内を定期配信し、一度利用した顧客の再訪を促す工夫も欠かせません。
なお、各施策の効果を測定することも重要です。Webサイトのアクセス解析や広告のクリック率、イベントの参加人数などのデータを定期的に確認し、効果が高い集客チャネルにリソースを重点投入するなど、常に施策のPDCAを回していきましょう!
- コワーキングスペースの公式サイトのSEO対策
- 季節や時期に合わせたプロモーションを展開する
- 外部の団体や企業とのコラボレーション
- 既存利用者の満足度を高める
④ 安定期の集客とリピーター維持
ある程度ユーザーが定着した安定期に入ったら、新規開拓だけでなくリピーターの維持・育成による安定収益化を目指す段階です。
具体的には、既存会員向けのコミュニティ作りをさらに充実させ、居心地の良い空間を維持することが重要になります。利用者同士が交流できる懇親会や趣味の勉強会を企画し、「ここに来れば新たな出会いや刺激がある」という場を提供しましょう。
そして、運営スタッフ自身がコミュニティマネージャーとなり、利用者同士を紹介したり声掛けを行ったりして交流を後押しすることも大切です。
そうしたつながりやイベントから生まれる価値は他では得られない魅力となり、利用継続や紹介による新規集客を促します。
また、満足度調査や要望のヒアリングを定期的に行うのも重要です!小さな改善を積み重ねることでユーザー体験の質を高められます。
現場の声に基づいて設備やサービスをアップデートし続けることで、「常に進化している」という印象を与えられ、飽きられにくくなります。
さらに、既存利用者が知人を誘いやすくなる紹介制度を導入するのも効果的です。
例えば、「友人を紹介すると双方に次回使える割引クーポンを進呈」といった特典を設ければ、利用者が自発的に宣伝してくれるようになります。
加えて、法人向けのプランを用意したり、専用ロッカー・郵便物受付など付帯サービスを拡充したりして、新たなニーズに応える施策も検討しましょう。
安定期にはこのように顧客ロイヤルティの向上と口コミによる集客サイクルの確立がカギとなります。
なお、GoogleやSNS上に寄せられたレビューには一つひとつ丁寧に返信し、満足している声には感謝を、不満の声には真摯な改善意欲を示すようにしましょう。こうした姿勢が新規検討者にも伝われば、信頼感につながり集客面でもプラスに働きます。
- 既存会員向けのコミュニティ作りをさらに充実される
- 満足度調査や要望のヒアリングを定期的に行う
- 既存利用者が知人を誘いやすくなる紹介制度を導入する
- 口コミレビューには、丁寧に返信対応する
地域やターゲット属性による集客戦略の違い
立地する地域の特性によっても、有効な集客手法は異なります。
都市部のオフィス街にある場合と地方の郊外にある場合では、想定される利用者層やニーズが変わってきます。
都市部では電車で通いやすい場所に立地している強みを活かし、月額制の法人利用や固定席プランなど継続利用を前提としたサービスを充実させると良いでしょう。また、周辺に多数の競合が存在する場合が多いため、設備のクオリティや追加サービス面での差別化、Web上での露出強化(SEOやMEO対策)が一層重要になります。
一方、地方の郊外エリアにある場合は、自家用車で来訪する利用者が多いため駐車場の確保が必須だといえます。
また、都市部に比べて一時利用(ドロップイン)のニーズが高い傾向があり、短時間から利用できる料金プランや予約なしで当日利用可能な仕組みを用意しておくことが集客につながります。
加えて、地域名を盛り込んだSEO対策(「○○市 コワーキング」で上位表示を狙う等)に力を入れることで、地元の潜在顧客にオンライン検索から見つけてもらいやすくなるでしょう。
また、上位に表示されているワークプレイスメディアに掲載依頼をするのもおすすめです。
自社ホームページのSEO対策と同時に行うことで、より多くのユーザーに知ってもらえ集客に役立ちます。

また、地元の祭りやイベントに協賛・参加して顔を売ったり、スペース内で地域の交流会を開いたりすることで、地域に根ざした存在として認知を広げられます。
地元商店街や近隣企業と提携して会員向け割引特典を提供すれば、地域ぐるみで利用を促進するきっかけにもなるでしょう。このように、「地域密着」を打ち出した戦略は、特に地方において新規顧客の開拓とリピーターの確保の両面で奏功します。
また、想定するターゲット属性によって訴求ポイントや具体的な施策を調整することも大切です。例えば、IT系フリーランスやスタートアップ起業家が多いスペースであれば、ビジネスに役立つセミナーや経験豊富な専門家によるメンタリングイベントを開催すると響きやすくなります。
逆に、地元企業のテレワーク社員が主な利用者なら、安定した高速通信環境や防音個室ブースの充実、オンライン会議用設備の完備など設備面の充実が訴求ポイントになるでしょう。
子育て中のフリーランスをターゲットに据える場合は、キッズスペースや託児サービスを提供すると安心して利用できるようになりますし、クリエイター向けであれば大型モニターや3Dプリンター、撮影スタジオなど制作に適した設備を備えると関心を引けます。
このようにメインターゲットを明確に定め、その層のニーズに合った環境・サービスを用意してアピールすることで、「自分に合った場所だ」と感じてもらいやすくなり、結果として集客効果が高まります。
コワーキングスペース集客で陥りやすい失敗例
効果的な施策を講じても、いくつかの落とし穴には注意が必要です。
過去の失敗事例から学び、同じ轍を踏まないようにしましょう。
コンセプトが不明確
「誰のために何を提供する空間か」が定まっていないと、特徴のないスペースになってしまい集客に苦戦します。
ターゲットや提供価値が曖昧なままでは、「何となく作った単なる作業場所」という印象になり、利用検討者に選ばれにくくなります。
安さ頼みの集客
価格を下げるだけで利用者を集めようとすると、一時的に人は来ても長続きしない傾向があります。
設備や雰囲気が劣るままでは「安かろう悪かろう」と思われ、少し条件の良い競合が現れれば利用者はそちらに流れてしまいます。
過度な値引き戦略は利益率も低下させ、持続的な運営を困難にするリスクがあります。
宣伝・情報発信の不足
オープン後に情報発信を怠れば、存在自体が知られず利用者は増えません。
特に公式ホームページ未開設やGoogleマップ未登録のままでは、大半の潜在顧客にリーチできず機会損失となってしまいます。
せっかくの魅力も知ってもらえなければ意味がないため、広報活動は地道に続ける必要があります。
コミュニティ軽視
単に場所と設備を提供するだけで、利用者同士の交流を促す仕掛けが何もない場合、スペースの付加価値が生まれません。
人とのつながりが感じられない環境では利用者の愛着が育たず、リピート利用や紹介による新規獲得も広がらない悪循環に陥ります。
需要リサーチ不足
出店前の市場調査や需要予測の甘さも失敗につながります。
ニーズが少ないエリアに開業したり、同エリアに競合が多いのに差別化が不十分だったりすると、予想以上に集客に苦労する結果になりかねません。
立地や周辺の潜在顧客層については事前に十分なリサーチを行い、計画段階から集客の見通しを立てておくことが大切です。
コスト計画の不備
初期投資や固定費に対する収支計画が甘いと、集客が順調でも利益が出ず事業継続が困難になります。
最初から高コスト体質で始めてしまうと、(実際、都心の一等地に豪華なスペースを開業したものの高コストを回収できず撤退した例もあります。)
想定以上の利用者を集めない限り赤字になってしまうため注意が必要です。
設備や人件費に見合った収益を上げられるよう、現実的な計画を立てましょう。
集客施策チェックリスト
最後に、コワーキングスペースの集客施策について見落しがないか確認するためのチェックリストを用意しました。
以下の項目を定期的に振り返り、抜けや漏れがないかチェックしましょう。
- ターゲット層とコンセプトは明確に定まっているか
- ポータルサイトやGoogleマップ等、基本的な外部媒体への情報掲載は済んでいるか
- 公式ホームページを開設し、料金・設備・アクセスなど必要な情報を網羅しているか
- SNSアカウントを開設し、日々の様子やお得情報を定期的に発信しているか
- 初回利用者向けの無料体験や割引キャンペーンを用意しているか
- 定期的にイベントやセミナーを開催し、利用者同士の交流を促進しているか
- メルマガやLINE等で既存利用者に継続的なフォローアップを行っているか
- 他にはない独自の設備・サービスなど差別化ポイントを打ち出せているか
- 利用者アンケート等で満足度を把握し、サービス改善に活かしているか
- 複数の集客チャネルの効果を分析し、PDCAを回しながら施策を改善しているか
まとめ
コワーキングスペースの集客は、一朝一夕で劇的な成果が出るものではありません。
しかし、各フェーズに合わせた適切な施策を地道に積み重ねていくことで、着実に利用者を増やし、ビジネスを成長させることができます。
ターゲットに響く明確なコンセプトを軸に、オンライン・オフライン双方から多面的にアプローチすることが大切です。また、利用者の声に耳を傾けてサービスを改善し続ければ、満足度が向上して自然と口コミが広がっていくでしょう。地道な取り組みの先には、「あの場所があって助かった」と地域やコミュニティに欠かせない存在として選ばれるコワーキングスペースへと成長できるはずです。
競合ひしめく中でも、自分ならではの強みを武器にきめ細かな集客努力を続ければ、必ず道は拓けるでしょう。