企業が導入するワーケーションとは
ワーケーションとは、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた新しい働き方です。
観光地や自然豊かな場所、非日常的な環境を活用しながらリモートワークを行う仕組みで、休暇によるリフレッシュ効果と業務効率を両立できる点が注目されています。
働き方改革が求められる中で、ワーケーションは社員のモチベーション向上や企業イメージの改善、人材採用力の強化に役立つ制度として導入する企業が増えています。
休暇型:休暇の合間に業務を行う
業務型:業務を中心に行いつつ、場所や時間を柔軟に選択
地域課題解決型:地域団体と連携し課題解決に取り組む
合宿型:一定期間集中して研修やプロジェクトを実施
サテライトオフィス型:地方オフィスやコワーキング施設を活用
企業が導入する際には、自社の目的や社員層に合わせたタイプを選ぶことが重要になります。
注目される企業の導入事例
ここからは、実際にワーケーションを実施している企業の事例を紹介していきます。
日本航空(JAL)の休暇型ワーケーション
2017年に休暇中の働き方を制度化。旅先で業務を行う環境を整えた結果、利用者は年々増加し、有給休暇取得率の改善や社員満足度の向上につながっています。
ユニリーバ・ジャパンの「WAA」「地域 de WAA」
時間や場所に縛られず働ける制度を導入し、自治体とも連携した地域型ワーケーションを展開。社員の働きやすさと地域活性化の両方を実現しました。
野村総合研究所の合宿型ワーケーション
古民家を改装した宿泊兼オフィスに社員を派遣。集中して業務に取り組む環境を整備することで、創造力の向上や時間意識の改善がみられました。
LIFULLのサテライト型ワーケーション
全国のコワーキング施設を活用し、社員が自由に働ける環境を提供。若手人材の採用力を高め、制度の魅力向上につなげています。
日本マイクロソフトやサイボウズの柔軟性重視型
クラウド環境を活用して、社員がどこでも安心して働ける仕組みを構築。リモートワークとワーケーションを融合し、ワークライフバランスを実現しています。
比較まとめ
| 企業 | 導入方式 | 主な狙い | 効果 |
|---|---|---|---|
| 日本航空(JAL) | 休暇型 | 有給取得促進・リフレッシュ | 利用者増・モチベーション向上 |
| ユニリーバ・ジャパン | WAA / 地域連携型 | 柔軟な働き方・地域貢献 | 創造性向上・地域活性化 |
| 野村総合研究所 | 合宿型 | 集中環境での新発想 | 企画力向上・休暇取得促進 |
| LIFULL | サテライト型 | 多拠点で働く自由・採用力強化 | 制度魅力の向上・若手人材獲得 |
| 日本マイクロソフト他 | 柔軟性重視型 | クラウド活用・リモート強化 | ワークライフバランス改善 |
| 寺ワーケーション | 体験型(静寂環境重視) | 心のリセット・集中 | 精神的安定・集中力アップ |
ワーケーション導入による効果
ワーケーションの導入は、企業にとって単なる福利厚生の拡充にとどまらず、組織全体の生産性や創造性を高める取り組みとして注目されています。
自然豊かな環境や普段と異なる場所での業務は、社員のリフレッシュ効果を生み、集中力や発想力を向上させます。
また、リモート環境での柔軟な働き方を提供することで、優秀な人材の確保や離職防止にもつながります。さらに、異なる地域でのワークスタイルは新たなビジネスアイデアやネットワークの創出を促進し、企業価値の向上に寄与します。
ワーケーションは「働き方改革」の一環として、組織の持続的な成長を支える有効な施策といえるでしょう。

社員属性別・利用メリット比較表
| 社員タイプ | 主なメリット | 補足解説 |
|---|---|---|
| 若手社員 | ・新しい経験からの刺激・地域でのネットワーク形成・柔軟な働き方体験 | キャリア形成期に新しい環境を経験することで視野が広がり、自立心が育つ。採用時の魅力にもなる。 |
| 管理職 | ・チームビルディング強化・集中環境で戦略立案・新しい関係構築 | 日常業務から離れ、合宿型などで戦略を練り直す機会を得る。チーム力強化にも直結する。 |
| 家庭を持つ社員 | ・育児や介護との両立・家族同伴型でワークライフバランス向上・長期休暇取得のしやすさ | 家族と過ごす時間を確保しながら働ける点が評価される。家庭を持つ社員の離職防止にも有効。 |
よくある課題と対策
企業でワーケーションを取り入れる動きが広がりつつありますが、実際に導入するとなるといくつかの課題が浮かび上がってきます。まず大きいのはコスト面です。宿泊費や交通費はもちろん、リモートでもストレスなく働けるように通信環境を整える必要があり、企業側の負担は決して小さくありません。
また、勤務場所がバラバラになることで勤怠管理が複雑になり、評価制度の公平性をどう保つかも悩ましいポイントです。加えて、外部のWi-Fiなどを使う機会が増えることで情報漏洩のリスクが高まるなど、セキュリティ面の不安も無視できません。
さらに、チームメンバー同士のコミュニケーションが不足しやすく、普段なら雑談やちょっとした相談で得られる一体感が失われる可能性もあります。リゾート地などで働く場合には、仕事と休暇の切り替えが難しく、かえって業務効率が下がってしまうケースもあるようです。
こうした課題を把握したうえで、制度設計やサポート体制を工夫することが、ワーケーションを成功させるカギになります。
導入ステップ表
| ステップ | 内容 | 具体的な行動例 |
|---|---|---|
| 1. 目的設定 | 導入目的を明確化 | 生産性向上、人材定着、採用強化などを設定 |
| 2. ルール整備 | 就業規則・評価基準の策定 | 勤怠管理や成果評価を明文化 |
| 3. トライアル実施 | 小規模導入で検証 | 一部部署や人数で試験的に導入 |
| 4. 課題抽出 | 改善点を整理 | コスト・勤怠・セキュリティ課題を把握 |
| 5. 本格導入 | 社内展開 | 成果を共有し制度を拡大 |
| 6. 定着化 | 継続的改善 | 社員の声を反映し制度を改良 |
まとめ:企業が学ぶべき成功の鍵
ワーケーションは単なる「休暇と仕事の融合」ではなく、働き方そのものを進化させる制度です。
導入企業から学べる成功の鍵は以下のとおりです。
- 柔軟性と社員主体の働き方を尊重する
- ルールを明確にして公平性を担保する
- 小規模トライアルから始め改善を重ねる
- 地域との連携を戦略的に行う
- 継続的な改善サイクルを回す
これらを実現した企業は、社員の満足度と生産性を高め、同時に地域や社会への貢献も果たしています。ワーケーションを戦略的に取り入れることは、今後の企業成長において重要な一歩になるでしょう。

