
行政書士として独立開業するときに、バーチャルオフィス利用ってできるの?

行政書士の開業方法は…?
行政書士として独立開業を考える際に、コスト削減のために「バーチャルオフィス」を利用できないかと検討する方も多いでしょう。
結論から言えば、行政書士はバーチャルオフィスだけで開業(事務所登録)することは認められていません。
バーチャルオフィスとは、実際には自分が常駐しない住所や電話番号などを借りられるサービスですが、行政書士として業務を行うには法律や規定で求められる「事務所」の要件を満たす必要があるためです。
この記事では、行政書士がバーチャルオフィスで開業できない理由や、代わりにどのような方法で開業すればよいのか、さらにバーチャルオフィスを活用する方法について詳しく紹介していきます。
行政書士はバーチャルオフィスで開業できるのか?
「バーチャルオフィスの住所だけで開業登録できるのか?」という疑問に対する答えは、残念ながら「できない」が答えです。
行政書士法では、行政書士が業務を行うための事務所を設けることが義務付けられており、その事務所には一定の設備や環境が求められています。
バーチャルオフィスは物理的な執務スペースや常駐スペースを伴わないため、こうした事務所要件を満たせないのです。
例えば、行政書士事務所には依頼者が訪れて相談や打ち合わせができる応接スペースが必要ですが、バーチャルオフィスには契約者専用の応接スペースがなく、仮に貸会議室のオプションがあっても共有スペースであり常に自由に使えるわけではありません。
結果として、依頼者が直接訪問できる場所がないと判断され、適切なサービス提供が困難になります。
また、他の利用者と空間を共有する環境では会話内容が漏れる恐れもあり、顧客のプライバシーを十分に守れないリスクがあります。したがって、バーチャルオフィスではなく自宅や実際のオフィスを事務所として登録する必要があります。
バーチャルオフィスで開業できない主な理由
行政書士がバーチャルオフィスを事務所登録できないのには、いくつかの具体的な理由があります。
以下に主なポイントを挙げて解説していきます。
理由1:顧客対応スペースとプライバシーの問題
行政書士はクライアントと対面で相談や打ち合わせを行う場面が想定されるため、落ち着いて応対できる専用スペースが必要です。
しかし、バーチャルオフィスの場合、契約者が常時利用できる個別の応接室がありません。たとえ貸会議室の利用オプションがあっても、それは他者と共有するスペースであり、いつでも自由に使えるわけではありません。
結果として、依頼者が直接訪問できる場所がないと判断され、サービス提供が困難になります。
また、他の利用者と空間を共有する環境では会話内容が漏れる恐れもあり、顧客のプライバシーを十分に守れないリスクがあります。
理由2:事務所の使用権限・契約上の問題
行政書士の事務所は、自分が正当に使用できる権限を持った場所でなければなりません。
例えば賃貸物件を事務所として使う場合、物件のオーナーや管理会社から事務所利用の許可を得る必要があります(自宅の場合でも賃貸なら名義人の承諾が必要です)。
しかし、バーチャルオフィスの住所はサービス提供会社が契約・管理する場所であり、利用者自身がそのスペースを占有しているわけではありません。
そのため、事務所の「使用権限」を証明しづらい点が問題となります。
理由3:必要な設備・環境の不足
行政書士事務所として認められるためには、業務に必要な設備やセキュリティ環境が整っていることが重要です。
例えば、パソコン、プリンター、机・椅子、書類保管庫など必要最低限の備品が設置され、顧客情報や書類を安全に保管できる鍵付きの保管設備や個室が用意されていることが求められます。
バーチャルオフィスでは、そもそもそれらを設置する物理的なスペースがありません。また、行政書士事務所であることを示す表札(看板)を掲示する義務がありますが、バーチャルオフィスでは専用スペースがないため表札を出すこともできません。
要するに、バーチャルオフィスは行政書士事務所に必要な物的要件を満たせないため、開業登録が認められないのです。
行政書士が事務所として利用できるオフィス形態は?
では、バーチャルオフィスが単独では事務所にできないとなると、行政書士はどのような場所で開業すれば良いのでしょうか。
実際には、行政書士が事務所として登録・利用できるオフィス形態として主に次の3つが挙げられます。

1つ目:賃貸オフィス(貸事務所)
一般的な賃貸事務所物件を借りて事務所とする方法です。
コストは高めですが、自分専用の空間としてレイアウトや設備を自由に整えられるメリットがあります。契約上も事務所用途が明確であり、要件さえ満たせば行政書士事務所として問題なく登録可能です。
2つ目:レンタルオフィス(シェアオフィス)
個人向けの小規模な個室や半個室を月額で利用できるサービスオフィスです。
賃貸事務所よりも初期費用や月々の賃料を抑えられ、備品やネット環境も初めから整っているためすぐに業務を始められます。
ただし、鍵付き専用個室を利用できるプランを選ぶことが重要です。
個室型であればプライバシーも確保でき、来客用の会議室を併設した施設もあります。
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3つ目:自宅(自宅兼事務所)
自分の住居の一室を事務所として登録する方法です。
経済的負担は少なく、通勤も不要という利点があります。ただし、自宅を事務所にする場合は居住空間とは分けた仕事専用スペースを確保し、事務所らしい環境に整える必要があります。また、マンションの場合は管理規約で事務所利用が禁止されていないか確認し、賃貸物件なら貸主の許可を取らなくてはなりません。自宅住所をウェブサイトや名刺に公開することへの抵抗感がある方も多いですが、その場合は後述するバーチャルオフィスの活用でプライバシー面を補うことが可能です。
以上の3つが主な選択肢です。
まとめると、行政書士として独立開業するには「実態のあるオフィス」を自宅か賃貸(レンタルオフィス含む)で確保することが必須となります。
個人で開業登録をするのであれば、まずは上記いずれかの方法で拠点を用意するのが基本となります。
レンタルオフィスで行政書士開業するメリットと注意点
上記の選択肢の中でも、レンタルオフィスを活用した開業は初期コストを抑えつつ必要条件を満たしやすいため、特に新人の行政書士にとって魅力的な方法です。
ここでは、レンタルオフィスで開業することのメリットと留意すべきポイントについてもう少し詳しく説明します。
メリット
初期費用・固定費の低減
賃貸事務所を新規契約する場合、初期費用が高額になりがちです。それに対しレンタルオフィスなら、入会金程度と月額利用料だけでスタートでき、机・椅子やインターネット環境なども最初から整っているため追加投資はほぼ不要です。光熱費が料金に含まれている場合も多く、ランニングコストを低く抑えられます。
立地と信用力の確保
レンタルオフィスは都市部の便利な場所にあるケースが多く、そうした住所を事務所所在地として登録・利用できます。一等地の住所を名刺やホームページに記載できれば、クライアントに与える印象も良くなり、営業上の信用力向上につながります。
設備やサービスの充実
個室タイプのレンタルオフィスであれば鍵付き空間で機密性が保たれ、共用の会議室やラウンジ、受付サービスなども必要に応じて利用できます。単独の事務所を構えるのと遜色ない環境を低コストで享受できる点は魅力です。
注意点
事前確認と契約内容のチェック
すべてのレンタルオフィスが行政書士事務所の要件を満たすとは限らないため、契約前にその環境が要件を満たしているか確認しましょう。
具体的には「完全個室で鍵がかかるか」「表札を掲示できるスペースがあるか」「郵便物の受け取りは可能か」などをチェックすることが大切です。
通勤・利便性
都市部のレンタルオフィスは立地が良い反面、自宅から遠すぎると通うのが負担になります。
自宅からの距離や通勤時間も考慮し、無理なく利用できる場所を選ぶことが大切です。どんなに住所が魅力的でも、ほとんど利用できないようでは本末転倒ですので、自身の生活圏とのバランスを取りましょう。
費用面の継続性
初期費用は安く済むレンタルオフィスですが、月々の利用料は立地や個室の広さによってそれなりの額になります。
開業直後は収入が不安定な場合も多いため、契約期間や解約条件、料金プランをよく理解しておく必要があります。長期契約の割引や途中解約の柔軟性など、自身の計画に合ったプランを選ぶと安心です。
レンタルオフィスは行政書士にとって有力な選択肢です。実際に多くの新人行政書士がレンタルオフィスを活用して低コストで必要十分な環境を確保し、独立を軌道に乗せています。
バーチャルオフィスの活用方法とメリット(行政書士編)
では、事務所としては使えないバーチャルオフィスですが、行政書士が上手に活用する方法はないのでしょうか。
実は、バーチャルオフィスは開業登録には使えないものの、業務運営上で役立つ場面が多々あります。
特に自宅を事務所にしている行政書士にとって、バーチャルオフィスの住所やサービスを併用することはプライバシー保護や信用力向上の面で大きなメリットとなります。
以下に、行政書士におすすめのバーチャルオフィス活用用途を一覧表にまとめました。
用途・場面 | バーチャルオフィス活用の内容・メリット |
名刺・ホームページでの住所掲載 | 自宅住所の代わりに都心などのバーチャルオフィス住所を記載できます。オフィス所在地を見栄えの良い住所にすることで専門家としての信頼感を高めつつ、個人の居住地を公開せずに済みます。 |
許認可申請など公式書類での所在地記載 | 行政書士業務で提出する書類に事務所所在地を記載する際、バーチャルオフィスの住所を用いることが可能です(※別途自宅など物理事務所を確保している場合)。官公庁への届出書類等で主要都市の住所を示せるため、対外的な印象が向上します。 |
郵便物・書類の受け取り代行 | バーチャルオフィス側で郵便物や宅配物を受領し、転送してもらえます。自宅を留守にしがちな場合でも重要書類を確実に受け取れるほか、自宅住所を取引先に直接知らせずに済むため安心です。 |
会議室・応接スペースの一時利用 | 一部のバーチャルオフィスプランでは、併設の会議室や応接スペースを時間貸しで利用できます。自宅では対応しにくいクライアントとの対面打ち合わせも、必要に応じて整った環境で実施できる利点があります。 |
プライバシーの確保・安全対策 | バーチャルオフィスを利用することで、行政書士本人や家族の住居住所をインターネット上や名刺上で公開せずに済みます。自宅住所を公開しないことは、ストーカーや押し売りなどのリスク軽減につながり、プライバシー面での安心感が得られます。 |
要するに、バーチャルオフィスは行政書士にとって心強い味方になり得ます。
自宅住所を公開したくない場合でも、バーチャルオフィスの住所を連絡先にすることでプライバシーと信用の両面を補完できるでしょう。
まとめ
行政書士はバーチャルオフィス単独では開業できないものの、実体のある事務所を用意した上でバーチャルオフィスを併用することでコスト削減と信用力向上の両立が図れます。
まずは法律や行政書士会の規定に沿った事務所(自宅やレンタルオフィス等)を準備し、そこで開業登録を済ませましょう。
その上で、バーチャルオフィスのサービスを上手に取り入れて、住所公開にまつわる不安を解消したり業務効率を高めたりすることがおすすめです。
自分の状況に合った方法で事務所を確保し、バーチャルオフィスも賢く活用することで、コストとリスクを抑えながら行政書士としての第一歩を踏み出せるでしょう。